AIが進化するほど、人間はもっと人間らしくなれるだろうか。
道具が賢くなる時代に、私たちが大切にしたいこと。
最近、AIを使っていて、ふと考えることがあります。
文章を書いてくれる。情報を集めてくれる。複雑な問題を分析し、解決策まで提案してくれる。
少し前なら何時間もかかっていた仕事が、ほんの数分で終わってしまう。
本当にすごい時代になったものです。
でも、便利になればなるほど、私の中に一つの問いが生まれてきます。
「私たちは、以前よりも創造的になっているのだろうか?」
答えがすぐに出ることは、本当に幸せなのだろうか。
例えば、ある経営者がAIに尋ねます。「社員が自分から動く会社にするには、どうすればいい?」
AIはたちまち、立派な答えを並べてくれます。
目標を共有する。権限を委譲する。評価制度を見直す。コミュニケーションを活性化する。
どれも間違ってはいません。
でも、私はここで、もう一つ尋ねてみたくなります。
「そもそも、あなたは社員と一緒に、どんな会社を創りたいのですか?」
すると、少し沈黙が生まれるかもしれません。そして、その沈黙の向こうから、
「社員が、ここで働いていてよかったと思える会社にしたい」そんな言葉が出てくるかもしれない。
私は、この瞬間が好きです。
誰かが用意した正解ではなく、その人自身の中から、本当に創りたいものが姿を現す瞬間です。
AIがどれほど賢くなっても、この瞬間を人間から奪ってほしくないと思うのです。
森の中で出会った、小さな生命の風景。
先日、鹿児島の新留小学校を訪れた折、森の中で心に残る光景に出会いました。
朽ちかけた老木の上に、新しい若葉が芽吹いていたのです。
古い木は、もう以前のようには成長できないのかもしれません。
けれど、その木がそこにあることで、新しい生命が育っている。
老いた木が若葉に代わって成長するのではない。
若葉が自ら育つための場所を、静かにつくっているのです。
その光景を見ながら、私は自分が取り組んでいる仕事のことを思いました。
人は、何によって動き出すのだろう。
森の中で、朽ちた老木の上に芽吹く若葉を見ながら、私は考えました。
この若葉は、誰かに「育ちなさい」と命令されたわけではありません。老木が代わりに育ってくれるわけでもありません。
自ら根を伸ばし、光に向かって葉を広げている。もちろん、人間の創造は植物の成長とは違います。
けれど、そこには私が大切にしたい一つのことが重なって見えました。
自分の人生を、自分で創り出していくこと。
人間は、自分が本当に創りたいものを思い描くことができます。
そして、まだ存在していないものを、現実の中に創り出すことができます。
私は、その力を信じています。
問題をなくすことと、未来を創ることは違う。
例えば、ある会社の経営者から、こんな相談を受けたとします。
「社員が指示待ちで困っている。もっと主体的に動いてほしい」
AIに相談すれば、社員の意欲を高めるための方法をいくつも提案してくれるでしょう。
研修をする。評価制度を変える。コミュニケーションを増やす。それも役に立つかもしれません。
けれど、私はまず尋ねてみたいのです。
「社員の指示待ちがなくなったとして、あなたはどんな会社を創りたいのですか?」
すると、経営者は少し考えて、こう答えるかもしれません。
「社員一人ひとりが、お客様のために何ができるかを考え、自分で判断して仕事を進められる会社にしたい」
ここで初めて、創りたいものが見えてきます。
では、今の現実はどうでしょう。
仕事の目的が十分に共有されていない。判断に迷うと、最後は社長の指示を待っている。
失敗を避けるために、社員が自分で判断する機会も少なくなっている。
これが現実だとすれば、必要なのは、単に社員の意識を変えることではないのかもしれません。
例えば、まず一つの仕事について、目的と判断基準を明確にし、社員自身が判断して進める機会をつくってみる。
その結果を確かめながら、次の仕事へと広げていく。
ここではじめて、創りたい会社に向かって現実が動き始めます。
人を変えようとすることと、人が望む結果を創り出せる構造をつくることは、違うのです。
では、AIは何をしてくれるのだろう。
私は、この創造のプロセスにこそ、AIの大きな可能性があると思っています。
先ほどの経営者なら、AIと一緒に仕事の流れを分析したり、判断が社長に集中している原因を整理したり、新しい仕事の進め方を考えたりできるでしょう。さらに、小さく試した結果を分析し、次の一手を検討することもできます。
しかし、ここで忘れたくないことがあります。
「どんな会社を創りたいのか」を選ぶのは、AIではなく経営者自身だということです。
AIは、その選択を実現するために、人間の思考を広げ、現実を見つめ直し、新たな方法を見つける手助けができる。
答えを出してもらうだけで終わるのではなく、AIを使うことで、人間がこれまで以上に創造的な仕事に向き合える。
私は、そんな関係を創りたいのです。
人生についても、同じことが言えるかもしれません。
例えば、定年を迎えた人がAIに相談します。
「これからの人生、何をすれば充実するでしょうか?」
AIは、趣味や旅行、ボランティア、学び直しなど、たくさんの選択肢を示してくれるでしょう。
でも、私はこう問いかけてみたいのです。
「もし、これからの人生で、あなたが心から創り出したいものを一つ選べるとしたら、それは何でしょう?」
若い世代に、自分が長年培ってきた技術を手渡したい。
妻と一緒に、まだ訪れたことのない土地を歩きたい。
地域の子どもたちが自由に学べる、小さな場所を創りたい。
どれも素敵な答えだと思います。
そして、何を選ぶかは、その人自身の自由です。
例えば、子どもたちの学びの場を創りたいと思ったなら、AIと一緒に必要な場所や費用、協力してくれる人、最初にできる小さな取り組みを考えていくことができます。
漠然とした憧れが、やがて形を持ちはじめる。
昨日までは存在していなかったものが、少しずつ現実の中に生まれてくる。
そこに、創造する喜びがあるのだと思います。
人間が創造の主役であり続けるために。AIが、ますます賢くなっていく時代。
私たちは、これまで以上に多くの仕事をAIに任せられるようになるでしょう。
それ自体は、素晴らしいことです。けれど、仕事が楽になることと、人生が豊かになることは、
必ずしも同じではありません。
大切なのは、空いた時間を何で埋めるかではなく、
その時間を使って、自分が本当に創りたいものを創り出せるかどうか。
人間の代わりに考える技術から、人間がより深く考えるための技術へ。
人間の代わりに判断する技術から、人間が自分で選んだ未来を実現するための技術へ。
そして、人間が何もしなくてよくなる未来ではなく、人間がもっと創造する喜びを味わえる未来へ。
私は、そんな方向に技術を使っていきたいと思っています。
あの森で出会った、朽ちた老木と新しい若葉。
老木は、若葉の人生を代わりに生きることはできません。けれど、新しい生命が育つための土台にはなれる。
私たちが創る技術も、そうありたい。
人間に代わって未来を決めるのではなく、人間が自ら選んだ未来を創り出す力になること。
それが、Future Creation Lab.オブリガードの大切にしたい姿勢です。
私たちは、人の生命力と想像力を引き出す技術を選ぶ。
そして、最後に一つ、あなたにも問いかけてみたいと思います。
「AIが今のあなたの仕事の半分を引き受けてくれるとしたら、あなたは何を創り出したいですか?」
その問いに向き合うことから、まだ存在していない、あなた自身の未来が始まるのかもしれません。
















