やさしさが回る経済

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人間というのは、おかしな生き物です。
たとえば、「地球にやさしく」と言われれば、なんとなくペットボトルを洗って捨てたり、「誰かのために」と言われれば、電車で席をゆずろうかなと思ったりする。
つまり、私たちはだれでも「ちょっとはいいことをしたい」と思っている。これは事実です。

けれども――そこがまた人間の面白いところで、
その「いいことをしたい気持ち」は、ずっと続くものではないのです。お腹がすいていたり、スマホの充電が切れそうだったりすると、「地球」も「誰か」も、どこかに吹っ飛んでしまいます。

この「続かない」感じ、私はとても大事だと思っています。なぜなら、これこそが本当の人間らしさだからです。

これまで、「人は善であれ」と宗教や思想が一生懸命に言ってきました。でもそれは、人間に無理をさせる話でもありました。「あなたはずっとやさしくあるべきだ」なんて言われたら、たいていの人は疲れてしまいます。
そして疲れた人がやがて離れていき、よい行いは広がらない――こうして昔の“いい運動”はしぼんでいったのです。

私は構造コンサルタントですから、もっと現実的な方法を考えます。
「人は弱い」という前提から始めます。うそをつくし、見栄もはるし、途中で面倒くさくもなる。
でも、そういう人間にも、ちゃんと「やさしさ」や「他人のために動きたい気持ち」もあるのです。
だったら、そこに無理なく手を差しのべるしくみ・構造=経済モデル
をつくればいい。そうすれば、人は説教されなくても自然と行動するようになります。

つまり、やさしさに、もう少し長く続いてもらうための“環境”を整えること。
そのやさしさが集まっていけば、大きな力になる。自然も社会も、それで変わっていくのです。

人間は天使ではない。でも、まったくの利己主義者でもない。
私は「人間は弱いが、捨てたものじゃない」と信じているのです。

そしてその信念のもとで、私は「やさしさが回る経済」をつくろうとしています。お金が回るように、信頼や思いやりが回る仕組みを。
そうすれば――かつての工業革命が世界を変えたように――次は、やさしさが世界を変える番なのです。

  • 2025 05.10
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