人の代わりに働く道具ではなく、人とともに働く道具を

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人の代わりに働く道具ではなく、人とともに働く道具を

「人々は自分の代わりに働いてくれる道具ではなく、自分とともに働いてくれる新しい道具を必要としている。人々は、より巧妙にプログラムされたエネルギー奴隷ではなく、各人が持っているエネルギーと想像力を十分に引き出すような技術を必要としているのだ。」

イヴァン・イリイチの『コンヴィヴィアリティのための道具』にあるこの言葉を読んだとき、私はとても強く惹かれました。

なぜなら、この言葉は「道具とは何のためにあるのか」という問いを超えて、私たちが仕事をするとはどういうことなのか、人と組織が創造するとはどういうことなのかを問いかけているように感じるからです。

いま、AIをはじめとする技術は驚くほどの速度で進化しています。

文章を書いてくれる。
資料をまとめてくれる。
調査をしてくれる。
アイデアを出してくれる。
判断まで支援してくれる。

便利になること自体は、もちろん悪いことではありません。

けれども私は、ときどき立ち止まって考えます。

便利になればなるほど、人間は本当に創造的になっているのだろうか。

 

「代わりにやってくれる」は、本当に豊かなのか

私たちは長い間、よい道具とは「人間の仕事を代わりにやってくれるもの」だと考えてきたように思います。

早くできる。
楽にできる。
間違いなくできる。

だから、効率化、自動化、省力化が進んできました。

しかし、イリイチが問いかけているのは、その先です。

道具が人間に代わって働けば働くほど、人間自身が持っていた能力まで使わなくなることがある。

考える力。
試行錯誤する力。
感じる力。
誰かと話し合う力。
そして、まだ存在していないものを思い描く力。

本来、技術はそうした人間の力を奪うためのものではなく、むしろ引き出すためのものではないか。

私はこの考え方に深く共感します。

人を「動かす」のではなく、人が「動き出す」

Future Creation Lab.オブリガードで企業や地域の方々と仕事をしていると、似た場面によく出会います。

「どうすれば社員を動かせるでしょうか」

「どうすれば地域の人に参加してもらえるでしょうか」

「どうすればメンバーの意識を変えられるでしょうか」

こうした問いは、一見もっともらしく聞こえます。

しかし、その問いの背後には、

誰かが誰かを動かすという構造があります。

そこで私が大切にしているのは、少し違う問いです。

その人自身が、何を創りたいと思っているのか。

そこから始めます。

創り出したい未来は何なのか。そして、いまの現実はどうなっているのか。

その二つを同時に、できるだけ正確に見る。

すると、そこに「創りたい未来」と「現在の現実」の差が生まれます。

ロバート・フリッツが言う「構造的緊張」です。

私は、この構造的緊張そのものが、一つの「道具」だと思っています。

しかしそれは、人の代わりに考えてくれる道具ではありません。

むしろ、その人自身が考えるための道具。

自分で現実を見るための道具。

自分で選ぶための道具。

そして、自分で次の一歩を決めるための道具です。

答えを与えることが、支援とは限らない

コンサルタントという仕事をしていると、つい答えを出したくなります。

「こうすればいいですよ」

「この方法が正しいですよ」

「次はこれをやりましょう」

けれども、こちらが答えを出せば出すほど、相手から「自分で創る余白」を奪ってしまうことがあります。

これはとても難しいところです。

支援したい。

だから助言する。

けれども、その助言が強すぎれば、相手はいつの間にか「正しい答えを教えてもらう人」になってしまう。

そこで最近、私は自分自身にも問いかけています。

私は、相手の代わりに考えてしまっていないだろうか。

それとも、相手自身の想像力が動き出すような場をつくれているだろうか。

この違いは、小さいようで、とても大きい。

会議もまた「道具」である

たとえば会議。

会議というものも、本来は一つの道具です。

ところが、多くの会議では、

報告する。
説明する。
承認する。
指示する。

ことに多くの時間が使われています。

しかし、もし会議を、

「創り出したい結果を共有する場所」

「現在の現実を確かめる場所」

「お互いの見えている現実の違いを知る場所」

「次の一歩を自分で選ぶ場所」

として設計したらどうでしょう。会議は一気に違うものになります。

人を管理するための道具から、人々の知恵と想像力を結びつける道具 へと変わっていきます。

私は、そんな会議をつくりたいと思っています。

AI時代だからこそ、問われること

このイリイチの言葉は、AIが日常の中に入り始めたいま、ますます重要になっているように感じます。

AIは、とても優秀です。

私自身も使います。

むしろ、これからますます使うでしょう。

けれども大切なのは、

「AIに何をさせるか」

だけではありません。

それ以上に、

AIを使うことで、人間のどんな力を大きくするのか。

という問いなのだと思います。

AIが文章を書いてくれるから、考えなくなるのか。

それとも、AIとの対話によって、自分でも気づかなかった考えを発見するのか。

AIが答えを教えてくれるから、判断を任せるのか。

それとも、より多くの可能性を見たうえで、自分自身で決めるのか。

技術そのものには、方向はありません。

どの方向に使うのかを決めるのは、人間です。

私がつくりたい「道具」

Future Creation Lab.という名前には、「未来を予測する」という意味ではなく、

未来を創り出すという思いを込めています。

未来は、どこかからやって来るものではありません。

私たちが何を創りたいのかを決め、

現在の現実を見つめ、一つひとつ選択し、行動することで生まれてくるものです。

だから私が提供したいのは、人々の代わりに未来をつくるサービスではありません。

経営戦略も、緊張構造チャートも、MMOTも、ファシリテーションも、目的は同じです。

人の中にすでにあるエネルギーと想像力が動き出すための道具をつくること。

それが、私の仕事なのだと思っています。

「自分の人生を、自分で創る」ために

人間は、効率だけで生きているわけではありません。

寄り道をする。迷う。失敗する。考え直す。誰かと話す。そして、ふと何かを思いつく。

そこには、非効率だけれど、人間にしかない豊かさがあります。

だからこそ、これからの技術や仕組みには、人間を小さくするものではなく、

人間をより人間らしくするもの であってほしいと思います。

誰かの代わりに生きることも、誰かに自分の人生を決めてもらうこともできません。

私たちは、一人ひとり、自分の人生を生きる。

そして、一人ひとりが持っている想像力を持ち寄って、まだ存在していない未来を創っていく。

イリイチの言う「コンヴィヴィアルな道具」とは、もしかすると、そんな未来をつくるための道具なのではないでしょうか。

私はこれからも、

「人の代わりに働く」のではなく、「人とともに働く」道具

を探し、つくり続けたいと思います。

それによって、その人自身が持っている生命力と想像力が、少しでも大きく動き出すように。

Future Creation Lab.オブリガードが創りたいものも、そこにあります。

  • 2026 09.23
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