長期と短期のビジョンを描く

この記事は3分で読めます


➀SDGs導入の意図と手に入れたい成果を明らかにしよう!

(2)長期と短期のビジョンを描く

ビジョン(目標)こそが、組織をまとめあげます。
SDGs導入の意図を明確にしたら、ビジョン策定に取り掛かりましょう。

SDGs導入には、長期ビジョン短期ビジョンの2つが必要です。

〇長期ビジョンをつくる
国連が作成したSDGsのゴールは2030年に設定されているので、組織のSDGsコアビジョンも長期になります。長期ビジョンとなると、立派なものをつくらなくてはと大上段に構えがちになりますが、リラックスしてイメージしてみましょう。

長期の予測は困難でたいてい外れます。不確実な時代に、現状分析を通していくら精緻な成功シナリオをつくっても、ほとんど意味がありません。

初めてのスマートフォンiPhone3の発売は2008年、それから10年も経たず今や生活にすっかり溶け込み、瞬時に必要な情報にアクセスできるのが当たり前になっています。私が社会人になった時は、連絡方法は電話か郵便しかありませんでした。現在はスマートフォンがあれば、個人が世界に向けてメッセージを簡単に発信できるようになりました。AIやデジタル技術の急激な進化、ウィルスの脅威、少子高齢化の加速、気候変動など、数年後のことも予測が困難な時代です。

予測が困難な遠い将来に対しては、現状を起点とした未来予測はあまり意味がありません。ですので、現状の制約を考慮せず、バラ色の未来を描いてみましょう。長期ビジョンを完全に達成したとしたら、あなたやあなたの組織、そして世界はどんな風に変わっていますか?どうやって達成したかはとりあえず横に置いておき、分析もせずただ想像します。片っ端から言葉やイメージにして書いてみましょう。数字で表現できるものは必ず数字で表現してみましょう。

〇ビジョンに取り組む姿勢は問題解決ではなく未来創造
ビジョンは未来を創りだすものです。問題解決ではありません。
問題解決の姿勢は厄介なものを取り除こうとするのに対して、未来創造の姿勢は本当に望ましい成果を生みだそうとするものです。

また問題解決の動機は問題の深刻さなので、解決がいい方向に進み問題の深刻度合いが薄れてくると、問題解決の動機はだんだん弱くなります。一方、未来創造の動機は、望ましい成果を生みだすことなので、成果に近づけば近づくほど、成果の輪郭がはっきりしてくるので、達成したい動機がさらに強まります。
長期にわたるSDGsのビジョンが問題解決型ではなく未来創造型であるべき理由はここにあります。

例えば、現状の課題が地域での組織知名度の低さだったとしましょう。
その場合のビジョンは「低い知名度を上げる」ではなく「地域の多くの人が、私たちの組織の活動を自分事として応援している」となります。

〇いい長期ビジョンの条件
それを聞いた人みんなが、ビジョンの内容を明確に思い描くことができるのがいいビジョンです。

著名な経営コンサルタントである、ロバート・フリッツはビジョンを次のように定義しています。
It is not what the vision is. It is what the vision dose.
ビジョンがなにかじゃなくて、ビジョンがなにをもたらすのかが大事。

みなさんのつくった長期ビジョンは、未来に何をもたらしていますか?
ビジョンを聞いた人が、明確にイメージできるよう、ブラッシュアップしてみてください。

〇自由で積極的な行動のために、最悪の想定を明るみにする

長期ビジョンは実現可能性よりも大きな方向性を表明するものです。ある意味、未来をでっちあげるので、真面目な人ほど、果たして実現できるのか?失敗したらどうしよう、経済的損失や信用の損失など、不安や心配事が頭をもたげてきます。
不安や心配事の解消法は一つです。最悪の事態を明るみにしてみることです。

失敗や不安の正体、失敗した時のインパクトをきちんと見極めてみてください。まさか命はとられませんよね。ほとんどが事務的に冷静に対策を立てれば解決することだと分かるはずです。最悪の想定が明るみになれば、見えない陰におびえることはなくなり、自由で積極的な行動がとれるようになります。

一番怖いことは、行動しないことです。行動の結果、成功しても、ベストを尽くして失敗しても、不本意な結果になったとしても、あなたはあなたのままです。あなたの価値は変わりません。ですので、押し付けられたビジョンではなく、あなたの本当に望む未来のビジョンを決めるところからチャレンジしてください。自分が何を望むかがはっきりすると、目標達成のためいろいろな選択を引き受ける力の源泉が開いてきます。

〇短期ビジョンをつくる。
大きな方向性を示す長期ビジョンが出来れば、次は短期ビジョンをつくります。

長期ビジョンの成果目標の実現を支える、下位の目標が短期ビジョンです。短期ビジョンは長期ビジョンで設定した上位目標を支える戦略的な役割があります。長期ビジョンと短期ビジョンがつながることで、初めて組織が前進できるようになります。
大きな方向性を示す長期ビジョンとは異なり、短期ビジョンは具体的で、現在の能力で実現可能な内容である必要があります。

例:SDGs導入推進プロジェクトチームメンバーを選定する。
  SDGs導入推進計画を策定する。
  経営幹部の長期ビジョンと導入計画の賛同を得る。


長期ビジョンと短期ビジョンが出来上がれば、つくったビジョンが今の組織の体質に合うか、副作用の恐れがないか、副作用の恐れがあればそれを防ぐための手立てを打つ、SDGs抗体検査を行うフェーズに入ります。

  • 2020 09.25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事