2種類の変革

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〇2種類の変革
変革には2種類あります。成功する変革と、失敗する(揺り戻す)変革です。

成功する変革とは、例えばタイプライターからワープロ、そろばんから電卓、黒電話から携帯電話のように、あっという間に簡単に起こり、しかも長続きする、正しく動機づけられた変革です。
失敗する(揺り戻す)変革とは、一旦はうまくいくように見え、成功間違いなしと思われた変革が、組織内の抵抗で鈍化し現状維持という停滞状態にもどってしまうようなものです。

失敗する変革を数え上げれば、きりがないでしょう。変革の大半は失敗します。それでは、なぜ多くの変革が失敗するのでしょうか?その原因は組織内に蔓延する葛藤構造にあります。

〇組織の葛藤構造
構造コンサルタントであるロバート・フリッツの著書「偉大な組織の最小抵抗経路」では、組織の大小にかかわらず、組織には葛藤構造が存在すると記されています。

一般的な代表例としては「ダイエットと飲食」があげられます。ダイエットをとるか飲食をとるか、まさにハムレット状態の場合、どちらをとるか葛藤しますよね。

組織の例としては「成長と生産能力」 「販売と製造」 「成長と利益確保(安定)」「投資とコスト抑制」 「自律分散と中央集権」 「意思決定権限と失敗」 「外部専門家の助言と自分流」 など、お互いが競合し、両立が困難な要素の組み合わせの場合、葛藤構造が生じます。

このような葛藤構造は、大企業だけでなくどんな組織にも蔓延しています。おまけに葛藤構造は、組織の中で同時多発していることが多くあります。例えば「成長と安定」の葛藤は、しばしば「変革と継続性」の葛藤と同居しています。そのような組織にさらに「投資とコスト抑制」や「自律分散と中央集権」の葛藤が加われば、混乱の極みとなり、自分にはどうしようもできないと絶望感を感じるかもしれません。

(「偉大な組織の最小抵抗経路」から抜粋)

〇SDGs導入の主要な葛藤
SDGsを経営に導入する場合、主要な葛藤を2つあげることができます。
「変革と継続性(通常運転)」「長期戦略と短期戦略」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

(変革 vs 継続性の例)  
A社は、不透明さを増す市場環境の中、さらなる成長を目指すため、SDGs関連の新規事業開発に着手。選抜メンバーでプロジェクトチームを結成し、大変革プログラム導入に取り掛かることになった。システムの再編成、現場主導で部門横断型意思決定プロセス、新評価制度の導入、人事異動で新しい人員配置を行う。
ところが変革が進むにつれ、A社社員たちは、不安と断絶を感じるようになる。慣れ浸しんだコミュニケーションラインが消え仕事がやりにくくなる。自分たちへの期待が何か、何をする必要があるのか、誰が責任者なのか次第に分からなくなる。経営陣はSDGsに貢献する新方針を明確に告げているにもかかわらず、実際の職場にもどれば、新しい理想とは程遠い現実がある。職場環境激変の中で、社員たちは継続性を望むようになり、新しい指揮命令系統と方針を無視し始める。組織内に分裂が起こり、変革への支持は弱まっていく。当初の士気は下がり変革が滞る。この時点でA社の経営陣は変革を放棄し、もとの通常運転の姿に戻る。
もとに戻ると、成長が鈍化し、創造性は阻まれ、改善は頭打ちになる。しばらく停滞が続いた後、A社の経営陣は再び変革の狼煙を上げる。ちょうどSDGsに関連した最新のマネジメント手法の流行も気になっていたところだ。
新たに壮大なキャンペーンが必要になり、その状況を見て、組織に長くいる人たちほど「変革なんてする価値があるのか」と疑問を持ち始めるようになる。

(長期戦略 vs 短期戦略の例)
B社は、持続可能なビジネスの成長のためにSDGsに関連した新たな市場にフォーカスした投資をしたい一方で、利益をあげるためにコストも抑えたいという欲求を抱えている。
B社がまず取り組むのは、SDGsに関連した将来性のある市場への参入による事業の成長である。それには工場建設や技術開発にはコストと時間がかかる。しかし、初期投資が成長につながるかどうかは、やってみなければわからない。一方で、投資を実行すればすぐに目先の利益は減り、株価に影響する。株式市場からみたら企業の将来が見えないので、株式としての目先の魅力は減少する。
株価が低迷すると、資金調達コストが高くなる。株式市場で値動きの高い競合他社は、より優位に資金調達でき、競争優位を獲得する。
そうなると、B社は脆弱に映り始め、敵対的買収のイメージがちらつきはじめる。危機感が高まり、経営陣は株価の値動きに注目することを求められる。企業は方針の見直しを迫られ、もっと魅力的な株式にしようと取り組み始める。
するとB社のフォーカスは、再投資から高収益へとシフトする。しかし、危機が去り、株価に問題がなくなり、競合の脅威が薄れると、B社はまたしてもSDGsに関連した長期的な再投資にフォーカスしはじめる。

(「偉大な組織の最小抵抗経路」掲載事例をSDGs導入ケースにアレンジしています)

 

 

  • 2020 10.09
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