②目標から見た、今のリアリティを正確に把握する
導入チームは、リアリティを正確に定義します。主観的な論評ではなく、目標に対して今現時点私たちはどこにいるのか、出発地点の状況を客観的に事実(ファクト)を観察する必要があります。
ファクトの観察には規律が必要です。私たちは、世界を自分固有のレンズを通して見ています。レンズとは理論、経験、理想、世界観、持論、憶測など。このレンズが現実認識を歪めて、緊張構造を弱め、骨抜きにしてしまうのです。
では、今のリアリティで何を記述すればいいのでしょうか?今のリアリティの全てを書こうとすればかなりのボリュームになるし、目標達成に必要のない事柄も含まれるでしょう。ここで必要な今のリアリティは、目標で書いた項目に対応するものを記述してみましょう。
前述したとおりSDGsの本質はイノベーション。イノベーションは「新たな商品やサービスの創出」「新たな製造プロセスや提供プロセスの創出」、つまり対象は「財・サービス」「プロセス」の2種類となります。いましている活動をSDGsと紐づけることは、組織メンバーの啓発には効果がありますが、最終目的ではなくイノベーション達成のための手段です。ですので、ここでは社内で具体的なイノベーションが必要となる目標に絞って記載しています。
目標の例
2年後にSDGs関連新商品の開発を年間8点以上行う。3年後には左記新商品関連売上1億円、利益率40%達成を目指す。 その結果、SDGs経営に積極的に取り組む企業として業界及びマーケットからの認知が定着し、社会から必要とされる企業へと成長を遂げる。
今のリアリティの例
現在の新製品開発は年間3点。開発室は3名体制で、勤続10年の経験を積んだ室長1名、新人2名の構成。開発室と製造部門の関係は良好。マーケット部門との情報共有は月1回の頻度。新製品製造能力は年間5点が限界。新製品開発について経営陣には余裕がなく、変革には少し抵抗がある。今期の新製品売上予算は4000万円で、予算達成は見込めそう。品質管理の仕組みがなく、顧客から品質について不満があることが報告されている。新製品の利益率は35%を維持。社内SDGsの啓発はとして、管理職対象の勉強会を3回開催。地域交流を深めるため、CSR推進室を中心に環境保護活動として、地元を流れる河川敷のごみ回収に毎回参加。また社員が地元小学校に赴き、食育をテーマに「放課後子ども教室」を年3回開催。
今のリアリティ記述のポイント(網羅的・正確・客観的)
・目標に書かれた項目に対応した記述になっていること
・必要な全体像を描けているか
・ニュースレポートのように客観的な記載になっているか
・すべての必要な事実を含めているか
(例:現在の売上、現在のマーケット動向、現在のマーケットシェア、現在の競合、現在の財務体質、現在の製品品質、現在の流通システム、現在の生産能力と利用可能資源、現在のマネジメント戦略と姿勢、現在の雇用市場と雇用慣行、現在のシステム、現在の組織の人員の能力・才能、現在のコアコンピタンス、現在の意思決定プロセス など)
ロバート・フリッツ著「偉大な組織の最小抵抗経路」より抜粋